1 はじめに
「家庭教師を探しているが、どんな指導をしてもらえるのだろう?」このように家庭教師の指導方法に着目することは、子どもにあった家庭教師を探すうえで重要な観点の一つです。一人ひとりの理解度や個性、そして学習の目標に合わせた学習方法を選択することにより、学習を継続し、効果的に学力を伸ばすことが期待できます。
保護者の方が家庭教師が行う指導方法について知っておくことにはいくつかのメリットがあります。
学習サポートの強化
保護者が家庭教師の指導方法を理解していることで、自宅での学習環境を整える手助けができます。例えば指導スタイルに合わせた学習教材を用意することや、保護者が子どもの学習課題に参加することで、生徒がより効果的に学べる環境を提供できます。
コミュニケーションの向上
家庭教師と保護者との間で共通の理解があると、コミュニケーションがスムーズになります。指導方法について話し合うことで、子どもの課題について具体的な情報交換ができ、より良いサポート体制を築くことができます。
生徒への適切なフィードバック
保護者が指導方法の目的を理解しておくことにより、保護者は子どもに対して適切なフィードバックや励ましを行うことが可能です。このフィードバックは生徒のモチベーション維持にも役立ちます。
この記事では家庭教師が行う指導方法を分類し、それぞれの特徴をご紹介します。
2 主な指導方法の分類
2.1 知識の教授型
このアプローチは教師が主導となり、生徒に必要な知識を体系的に提供します。この方法は主に以下のステップから構成されます。
ステップ 1. 講義形式で新しい概念や理論を説明する。
ステップ 2. 生徒に具体例を示しながら進める。
ステップ 3. 適時生徒に質問を行い、学習内容の理解や、他分野の理解を確認する。
ステップ 4. 宿題やテストを実施し、理解度を確認する。
この方法は学校でもよく行われる伝統的なアプローチです。ただし家庭教師の場合は生徒に教授する内容を生徒の理解度に合わせて調整することができます。
この形式の授業は受け身的である印象をお持ちの方も多いかもしれませんが、家庭教師のレッスンとして行う場合は、通常、生徒の能動的な活動を促す形式で行います。
実際、レッスン中にはしばしば質問を行います(ステップ 3)。この質問の目的は生徒の学習内容の理解を確認することです。教師は質問を行う際に生徒の様子を確認します。場合によっては徐々にヒントを出して、生徒の思考を促します。まだ生徒が理解できていないと判断した場合は、最初の説明とは少し違った表現や方法でさらに説明を行います (しかしながら、生徒に合わせて複数の説明を用意、選択できるかは家庭教師の技量による部分が大きいと思われます)。さらにこの質問では、現在学習している分野の理解に必要な他の分野の理解についても確認します。必要に応じてこれらの分野についても説明を行います。
こうした質問を通して、 生徒はどこがわからないか を、教師は徐々に把握していくことができます。したがって、レッスン中に教師の質問に答えられなくても大丈夫です。教師の質問の目的は、あくまで生徒の理解を把握することです。質問に答えられなくても、その情報をもとにさらにサポートを行うことができます。もちろん学習内容を理解して答えることができれば素晴らしいです。
レッスンの後は宿題やテストを行って、理解度を確認する場合があります (ステップ 4)。生徒が自分で問題や課題に取り組むことで、学習した知識のアウトプットを促します。対面の場合はもちろん、オンラインであっても解いた宿題を写真で送ったり、オンラインのホワイトボードサービスを利用することにより、教師は宿題の添削を行うことができます。集団授業と違って、家庭教師は宿題へのより細かなフィードバックを行うことができます。
2.2 問題演習をベースとする型
「知識の教授型」の指導方法は、まず必要な知識を用意してそれを体系的に教えていくという意味で、どちらかというとトップダウン的な指導方法です。それとは逆に問題演習をベースとする指導方法は、生徒が問題を解き、教師がそれに対するフィードバックを行うプロセスを繰り返すことで、生徒が徐々に必要な知識を定着させていくというボトムアップ的なアプローチです。
ある程度基本的な概念の理解や問題が解けるようになった後は、このような問題演習をベースとする方法も効果的です。「知識の教授型」よりもより生徒のアウトプットが多くなり、知識や技能の定着をより進めることが期待できます。
この指導方法を行う場合に重要な点をいくつか紹介します。
ステップ 1. 生徒にとって適切な難易度の問題を用意する。
ステップ 2. 生徒に問題を考えた過程を適時質問・確認し、論理の飛躍がないか、理解が不十分な箇所がないかなど、生徒の理解度について把握する。
ステップ 3. 生徒が間違えた箇所の説明や、合っている箇所についての称賛など適切なフィードバックを行い、生徒の疑問点や不安点を解消し、自信をつけてもらう。
まずは適切な難易度の問題を選ぶことが重要です (ステップ 1)。あまりに難しい問題では生徒のアウトプットを促すことが難しくなります。また生徒が自信をなくしてしまうことも考えられます。
生徒があらかじめ解きたい問題を用意している場合など、問題の難易度の選択が難しい場合もあります。その場合は問題の難易度に応じてヒントを出したり、解説の分量を調整するなど、教師は柔軟に対応することができます。
問題演習をベースとする方法では生徒のアウトプットが多くなるため、教師は生徒の理解度をより把握しやすくなります (ステップ 2)。また解いて終わり、ではなく適切なフィードバックを行うことで、生徒の学びを促進することも重要です (ステップ 3)。
2.3 プロジェクトベース型
日々の試験に追われる場合は必ずしもベストな方法ではないかもしれませんが、時間的な余裕がある場合、または違った方法で学習を行いたい場合は、プロジェクトをベースとする学習方法が考えられます。プロジェクトベースの学習は、生徒が実際の課題解決に取り組むことで、深い理解、そして学んだ知識の応用を促進します。
このスタイルでは、教師が用意したテーマや生徒の興味関心の高いテーマに基づいてプロジェクトを行います。簡単な調査や実験を行い、最終的に結果を教師に発表します。プロジェクトを進める過程で教師とコミュニケーションをとり、課題についてのヒントやアドバイスを受けることもできます。
重要なことは、最初にプロジェクトを通して達成を目指す目標を明確にし、教師や生徒、保護者の間で共有しておくことです。目標を共有できていれば、互いに協力を行いやすくなります。
こうした学習方法では単なる科目の学習だけではなく、プロジェクトの設定と達成による問題解決という、より実践的なアプローチで学習を進めることができます。一方で指導する教師には、研究活動についてのある程度の理解が必要となるでしょう。複雑なプロジェクトを行う必要はありませんが、生徒の課題設定とその達成のサポートを行うためには、やはり教師自身が課題を遂行するための一般的な過程について理解しておくことが求められるでしょう。
3 まとめ
生徒一人ひとりには考え方や個性など異なるバックグラウンドがあります。それぞれの特性に応じた指導法を取り入れることで、より効果的な学びへとつながることでしょう。家庭教師として、この一人ひとりにあった学習方法の提供が大切だと考えています。ご興味のある方はお気軽にご相談ください。一緒になって最適なサポートを考えていきましょう。